研究課題/領域番号 |
09760213
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
農業経済学
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
尾碕 亨 (尾ざき 亨) 酪農学園大学, 酪農学部, 助教授 (70275486)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1998年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1997年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 生鮮輸入野菜 / 価格形成 / 予約相対取引 / 輸入商社 / 輸入野菜 / 量販店 / JA / 仕入先 / オ-ガニック / 表示 |
研究概要 |
近年、国内野菜の自給率が低下しつつある。90年の91.0%から年々低下し、96年では85.8%にまで低下している。なかでも92年以降の生鮮野菜輸入の急増は、国内野菜の自給率の低下に一層拍車をかけている。また、生鮮野菜輸入の急増は、国内野菜の供給力の低下にも少なからず影響を与えている。 生鮮野菜の輸入が増大する中で、量販店での生鮮輸入野菜の取扱いも増えてきている。量販店での生鮮輸入野菜の取扱の増大は、大型量販店を中心に卸先市場離れを一層促進させ、国内野菜の流通の仕組みにも大きなインパクトを与えつつあり、これまでの伝統的な卸売市場流通の仕入方法や価格形成方法を大きく変えつつある。 本研究は、まず第1に、輸入野菜急増のもとでの生鮮輸入野菜の物流動向を解明した。第2に、生鮮輸入野菜急増のもとでの野菜流通の仕入先や取引方法(価格形成)の変化について、小売店(全国のスーパー及び八百屋)に実施したアンケート調査をもとに考察した。 以上の分析を通じ、以下の点が解明された。 近年の生鮮輸入野菜の急増は、国内野菜の供給力の低下をもたらしただけでなく、国内野菜流通の仕組みや価格形成方法に大きなインパクトを与えつつある。 第1に、生鮮輸入野菜の取扱は、小売規模が大きい程、仕入先や価格形成においてメリットがあり、今後とも積極的に取り扱いたい意向を持っている。 第2に、これまで輸入野菜を専門に取り扱っていた輸入商社の中に、国内野菜の取扱を開始する輸入商社も出現し、特に大手青果専門輸入商社と大型店を中心に独自の流通ルートを確立しつつある。 第3に、生鮮輸入野菜の主要取引方法である予約相対取引が、国内野菜流通の取引方法として大型店を中心に増えつつある。小売店も今後増やしていきたい意向を強く持っている。また国内の輸入野菜と競合する品目や一部の産地では、すでに予約相対取引を導入しているところや今後導入していきたい産地も在在する。 こうした輸入野菜急増にともなう動きは、現在の野菜流通における卸売市場を中心とした流通や取引方法に、ますます変容を迫ることになり、特に卸売市場の最も重要な機能である価格形成機能を一層変質化させる危険性を有している。 近年、我が国経済の規制緩和が進む中で、農業分野においても総自由化が押し進められている。農産物の価格政策もこうした規制緩和の一連の流れの中で後退し、資本の論理による競争原理がますます強化される状況の中での野菜流通における予約相対取引の増大は、野菜流通が一部の巨大なバイイングパワーを有する大手小売資本や大手青果専門輸入商社資本主導によって価格形成を通じてコントロールされる危険が一層高まらざる得ないと言える。 これは、巨大輸入商社資本にとっては、国内野菜市場への進出による新たなビジネスチャンス(利潤獲得)の拡大であり、大型小売小売資本にとっては、低価格安定取引によるビジネスチャンス(利潤獲得)の拡大となる。逆に国内野菜産地の生産者にとっては、限界費用(C+V)部分のV部分の一層の収奪の可能性を意味する。 いま生鮮野菜をめぐる流通・市場は大型小売資本や巨大輸入商社資本による新たなビジネスチャンス(利潤獲得)拡大の場となっており、還元すれば大型流通資本主導による野菜流通の新たな再編と言っても過言ではない。
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