本研究の目的は、日本沿岸漁業における有効な資源管理組織の共通した組織特性と、その組織特性を形成する組織手法ないし組織の管理技術との関係を定性的・定量的に解明することである。いわば、これまでに暗黙知の世界に埋没しがちな日本沿岸漁業資源管理の経験を組織論的な視点から理論化することを通じて、漁業資源管理における有効かつ効率的な管理組織を構築するためのメニューを開発する。本研究では目的達成のために、(1)これまでに有効だとされてきた漁業資源管理組織から抽出された組織特性と当該組織の用いる組織手法もしくは管理手法との関わりを解明すること、(2)当該組織手法・管理手法が優れた組織特性を発揮させ、組織が有効に機能するための諸条件を考察すること、(3)以上を踏まえて、有効かつ効率的な漁業資源管理組織を組織ビルディングするためのメニューを開発すること、の三つを課題として設定する。 本研究ではこれまでに全国的に先進事例として知られてきた代表的な組織を調査事例として選定し、それらへのフィールド・ワークならびにアンケート調査という分析手法を用いて、定性的・定量的な解析を試みた。 有効な管理組織のもつ六つの組織特性を発揮させるための組織手法として、次のような結果を得た。(1)「組織の制度化」をはかるためには各種漁協下部組織や規定、内規、さらにはしきたりの充実、(2)「組織の合意形成」のためには総会、部会、話し合い、インフォーマルな根回し、(3)「組織内コンフリクトの解消」のためにはプール制、共同操業、輪番制、(4)「管理見込み利益の保障」のためには共同漁業権(制度的保障)、組織内漁業暦・点数制、慣行的地先権、(5)「利益配分の公平性」のためにはプール制、漁業暦・点数制、傾斜配分方式、輪番制、(5)「費用の受益者負担」のためにはプール制、漁業暦、点数制、以上のような諸方式を抽出することができた。
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