研究概要 |
本研究では神戸市北部に位置する農業用溜池と洪水調整池の2つの小型貯水池について、水理・水質特性の調査検討を行った。溜池は平常満水位で管理されており、調整池は洪水制御の目的から低水位で管理されている。これらの水理特性と水質特性の関わりを明らかにすることが本研究の目的であり、その結果以下のような知見が得られた。1,溜池の無降雨時の貯水量は11000t、調整池は3000t程度で、この結果年間回転率(年間流入量/貯留量)がそれぞれ0.3、90程度になった。これは低水時の水理特性である。2,低水時には、池の貯留量は蒸発散に応じて、昼間に最小となる24時間変動を示す。調整池では人間活動に応じた流入量の変動を受け、、昼間に最大値をとる24時間変動を示す。3,溜池と調整池の|1一流入水質/流出水質|の値は溜池で大きく、調整池では小さい。これは上記の回転率の結果と一致しており、バッファの大きな溜池では池内での貯留効果が水質にも大きく影響する。4,池内での深度方向の水質変化は、両者とも最大水深が3.5m以下であったこともあり、従来報告されているとおり、顕著なものは見られなかった。特にRpHなどを見ると、この傾向が明らかであった。5,無降雨時における池内の物質収支から、両池とも池内での物質のsink/sourceを考慮しなければならないことが判明した。特に調整池では栄養塩類を中心に池内で吸収される物質が多く、ECなどの無機物質では池内から物質供給を受けているものがあった。これらの吸収・わき出し量の強度は誤差の範囲内でほぼ一定の値をとった。溜池ではバッファが大きなため、この傾向が調整池ほど明瞭には示されなかった。このことは、小型貯水池内の物質収支を考える際に定常的な物質のsink/source項を与える必要があることを示している。
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