研究概要 |
イネの低圧栽培実験を行った。使用した品種は,わい性のわい稲Cである。栽培実験は発芽育苗実験と登熟実験に分かれる。発芽育苗実験に用いたのは,昨年度新規に製作した並列実験可能な2台のチャンバーシステムである。アクリル製で,栽培チャンバ一部の大きさは内寸27cm×27cm×35cm,肉厚が2cmの真空仕様である。これを用いて1台を常圧区,もう1台を低圧区とし並列実験を行った。実験は異なる3種類の全圧条件,100,50,34kPaで行った。酸素分圧は20kPa,二酸化炭素分圧は500Paで同一とし,温度,光強度,培養液条件も一致させた。播種後発芽を開始した株を10日間栽培し,成長量を比較した。その結果,50kPaの低圧では常圧と有意差がなかったが,34kPaでは,大きく成長が遅れることが明らかになった。登熟実験は,昨年度に製作改良した大型の栽培チャンバー(ステンレス製,160L,内高55cm)を中心とするシステムを用いて実験を行った。ガス分圧の制御は,ガス混合室を設けずに,各ガスを圧力調整器,流量計,電磁弁を通して直接チャンバーに流入させて制御した。CO_2分析器はチャンバー内部に,02分析器は排気ポンプの出口に取り付けた。本方法は,これまでの低圧実験では実現できていなかった制御方法であり,その有効性を確認した。チャンバー外上面に400Wメタルハライドランプを取り付けて光量子束密度700μmolm^<-2>s^<-1>を得た。培養液は3日おきに交換した。本システムを用いて,常圧下で100日間栽培した出穂開始期のイネを46日間,常圧および全圧50kPaの低圧条件で栽培し,成長および種子形成の様子を比較した。ガス分圧,温度,光条件は同一とした。低圧区の葉の成長および根の重量は,対象区と比べると差はなかった。しかし,低圧では穂の数,籾の数が半分程度で,籾の1粒重も半分程度であった。また不稔率が高かった。この結果から,50kPaの低圧では栄養成長は常圧と変わらないが,生殖成長に全圧の影響があると推測された。
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