研究概要 |
本研究は,体外成熟ブタ卵に直流パルス刺激を与え,括性化後の表層顆粒の開裂と透明帯構成糖タンパクの経時的な変化について検討した。尚,表層顆粒の開裂は10μg/mlFITC標識AHG-Lectinで染色後,共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。一方,透明帯反応に伴う透明帯糖タンパクの変化は,卵細胞質を完全に除去した透明帯にビオチン標識処理を施し,個々の透明帯をSDS-PAGEで泳働した後,ECL法で検出した。更に,透明帯構成糖タンパクの変化に伴う透明帯硬化現象も0.1%タンパク分解酵素(プロテアーゼ)処理による透明帯の消化時間の差異により明らかにした。 成熟卵の表層顆粒は卵細胞膜直下に連続的な単層を形成しており,この卵の透明帯にはZP1,ZP2ならびにZP3の三種類の糖タンパクが認められた。一方,活性化刺激を与えた卵においては表層顆粒開裂の進行に伴いFITC蛍光度の減少と,ZP1とZP2のバンドの消失が観察された。しかし,ブタ卵の活性化後における表層顆粒の開裂には長時間を要し,活性化刺激1時間後に9%の卵で完全な表層顆粒の開裂が初めて確認された。同様に,ZP1とZP2の糖タンパクの消失として認められる透明帯の完全な変性には活性化刺激後3.5時間を要した。また,この透明帯構成糖タンパクの変性に伴ってタンパク分解酵素に対する抵抗性も著しく増加した。 以上の結果より,活性化後,ブタ卵が表層顆粒の開裂に伴う透明帯反応を完了するには長時間の培養が必要であることが明らかとなった。このことがブタ卵における体外受精での多精子侵入率の著しい増加に関与していると推定された。
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