研究概要 |
本年度においては,まず,卵巣摘除シバヤギの視床下部内側底部(弓状核および漏斗正中隆起部)に,多ニューロン発射活動(MUA)記録用微小電極を脳定位的に留置し,スタンチョンに繋留した覚醒状態の動物よりストレス状態に特異的に反応するMUAをリアルタイムに記録・解析しうる研究モデルを作出した。 続いて,これらの動物に対し,リポポリサッカライド(エンドトキシン)投与による免疫学的ストレス,インシュリン投与による低血糖ストレス,拘束ストレス,隔離ストレスを負荷し,その際にあらわれる神経活動の変化を解析するとともに,頚静脈に留置したカテーテルより経時的採血を行って副腎皮質ホルモンの分泌動態を指標とした内分泌学的検討を行った。その結果,現時点では例数が少ないものの,全てのストレッサーに対してMUAが特異的に反応し,その程度に応じた副腎皮質ホルモン濃度の上昇が観察された。 さらに,来年度予定されている「ストレス時に活性化する視床下部神経機構の解明」の準備段階として,シバヤギにおけるストレス関連ペプチド(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH),アルギニンバソプレッシン(AVP),オキシトシン(OXY))の視床下部内局在を免疫組織学的に検討したところ,室傍核内にCRH,AVP,OXY,視索上核にAVP,OXYの陽性細胞が,正中隆起内外層に各ペプチドの陽性神経終末が観察された。また,上記の研究モデルに対し,下垂体門脈採血法の適用を試みたところ,MUAの記録と同時にCRH,AVP,OXYが神経分泌される下垂体門脈血を得られることが判明した。
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