研究概要 |
高等生物の多くの遺伝子はその上流にCpGアイランドと呼ばれるCpG配列に富む領域が存在していることが知られている.このCpGアイランドは認識部位が非常に少ない制限酵素,すなわちレアカッターの認識部位を特異的に有しており,レアカッター認識部位を“目印"して遺伝子を検索することは非常に有効であると考えられる.そこで本年度は,昨年度の本研究課題において開発した非RIゲノムスキャニング法に蛍光標識したプライマーを適用し,レアカッター切断部位のみを検出できるように改良することを目的とした. まず,モデル生物として大腸菌を用い,本法の有用性ならびに検出座位のクローニングについて検討した.レアカッターNot Iと6種類の制限酵素との二重消化によってゲノムプロファイルを作成したところ,Not I切断部位を有するDNA断片のみを検出することが可能であった.また,2株の大腸菌(DH5αおよびINVαF')についてレアカッターEag Iを用いてゲノムプロファイルを作成したところ,それぞれ約20座位が検出され,このうち2座位に変異が認められた.さらに,変異座位をクローニングして塩基配列を解析し,大腸菌F因子転移領域内のHelicase I遺伝子およびリボゾームRNA遺伝子(rrnH)であることを同定した. つぎに,高等生物のCpGアイランドにおけるメチル化・脱メチル化を標的として組織特異的な遺伝子変化の解析を試みた.ウズラの脳,心臓,腎臓および精巣より抽出したゲノムDNAを材料に,Eag I単独消化によってアンプリコンを作製し,Hinf Iにて二次元展開してゲノムプロファイルを作成したところ,それぞれ約320スポットが検出され,このうち4スポットに変異が認められた.これらのDNA断片はレアカッター切断部位を有していることから,組織特異的に変化している遺伝子の一部,あるいはその近傍である可能性が示唆された.
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