研究概要 |
自然草地管理に対する基礎的知見を得るために,利用放棄により変化する群落構造の動態を阿蘇地方の標高約500〜800mに立地する自然草地において調査検討した。放牧に利用している自然草地を2年間放置した場合,放牧利用している場合よりもススキ,アブラススキ,メガルカヤのような大型の草本種の優占度が増加し,シバ,スミレ,ヒメハギ,タヌキマメなどのような小型の草本種の優占度が減少した。また,放置した草地では放牧利用している草地よりも植物群落の平均自然高が増加した。これらの群落の垂直面の画像をデジタルカメラにより記録した後,葉部領域を色彩情報により抽出することにより群落水平層別の葉部密度を求めた。この結果,群落上層部の葉部密度は群落下層部への日射透過量と負の相関を有した。放置した草地においては,特に大型草本種による群落の水平方向への空間分布が増加することにより群落下層への日射透過量が減少し,下層にて生活する小型草本類の出現頻度が低下したと考えられた。 2年間放置した草地では,優占度は極めて低いが自然高が10cm以下の当年実生と考えられる木本種個体も数種確認された。また,利用放棄され10年を経過した草地を調査したところ,最優占種のススキに続き,アセビ,コナラなど木本種の優占度が高かった。このように放置年数が増加するにつれ,大型草本種が優占する群落から低木種や高木陽樹種が優占する群落へと遷移が進行することが認められた。
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