研究概要 |
本研究の目的は,糖輸送体分子の細胞内局在機構を解明することである.そのため,糖輸送体遺伝子を遺伝子工学的手法によって改変し極性を持つ上皮培養細胞(MDCK細胞)や生体組織細胞に導入発現させ,その挙動をレーザー共焦点顕微鏡法等で観察した.実験には腎臓や小腸上皮細胞で頂部細胞膜に局在する糖輸送体SGLT1を用いた.野生型のSGLT1遺伝子を導入したMDCK細胞を蛍光抗体染色しレーザー共焦点顕微鏡で観察したところ,頂部細胞膜に限局していた.しかし,N末部の膜外突出部位にデリーションやアミノ酸置換などの変異を導入したcDNAクローンを上皮培養細胞に導入したところ頂部細胞膜局在がみだされ,頂部および基底側壁部の全細胞膜に局在するような,あるいは細胞膜には組み込まれず細胞質コンパートメントに局在を示すようになった.頂部細胞膜局在を乱す変異は第一膜貫通領域の直前にある9残基のアミノ酸配列内に限られていた.以上の結果は,SGLT1のN末膜外突出部位にある短い配列が頂部細胞膜局在の調節システムに深く関与していることを示唆する.こうした現象が培養細胞だけでなく実際の生体組織細胞でも起こりうるのかを確認するために,生体組織細胞へ直接cDNAクローンを導入する方法として,生体エレクトロポレーション法を確立した.また,組織に火傷を伴わない方法として,現在ジーンガンによるパーティクルデリバリーシステムの導入を試みている.
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