研究概要 |
1. 研究の目的 我々は,細胞膜修復が細胞内の小胞を介して行われることを証明した(J.Cell Biol.,95,97).本研究では,細胞内アクチンも損傷膜修復に重要な役割を果たしているのではないかと考え,細胞膜損傷修復ならびに組織修復に果たす細胞内アクチンの機能的役割を胃粘膜上皮由来細胞を用いて明らかにした. 2. 研究実施と結果 (1) 損傷細胞膜直下のアクチン脱重合および重合 損傷細胞を経時的に固定し,細胞内アクチンをフローサイトメトリー,蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果,損傷細胞内のF-アクチンが瞬時(15秒以内)に脱重合し,その後,漸次的(1-30分)に再重合することがわかった.このことは,細胞内アクチンの脱重合が,小胞による瞬時の膜供給を促し,素早い膜修復を行っているという仮説に至った.また,膜修復後ゆっくりとしたアクチンの再重合が損傷細胞内で起こり,損傷細胞も積極的に組織修復に寄与すると考えられた. (2) 膜修復のためのアクチン脱重合の必要性 アクチンに対する抗体,サイトカラシンB,DNase Iまたはファロイジン,Jasplakinolideの影響下で膜損傷を行い,細胞外に漏れたATPを測定することで膜修復を確認した.その結果,アクチン脱重合が膜修復に不可欠であった. 3. 発表・報告 本研究結果は米国細胞生物学会および解剖学会で報告し,現在.Jornal of Cell Biology誌に投稿中である.また,本研究途上で発生した結果についても,Experimental Eye Research誌およびBiology Bull.誌に報告した.
|