研究概要 |
本研究では,精祖細胞に発現するアンドロゲンレセブター(AR)の役割をin vivo,in vitroの実験系を用いて解明することを目的とした。本年度は,in yitro実験系で利用する解析手段を確立し,マウス成体の精粗細胞におけるARの挙動を明らかにした(in vivo)。免疫組織化学的には,精祖細胞を含む精細管内の各細胞のAR発現変化を半定量的に解析する一方,in situ hybridization法を用い,各細胞のARmRNA発現を検出した。マウス精巣精細管の全載標本を用い,抗AR抗体(NH27)と反応,螢光標識(Cy3)し,同時にSYBR Green IおよびTOTO-3にて核を標識し細胞種の同定を行った。共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて得た精細管上皮基底部の光学的切片像から,各則胞核のAR螢光強度を計測した。In situ hybridization法には,マウス精巣凍結切片を用い,AR mRNAに特異的なdigoxigenin標識オリゴヌクレオチドをプローブとして使用した。 その結果,セルトリ細胞,精祖細胞,筋様細胞の核が精細管上皮周期を通じて常にAR陽性であり,セルトリ細胞と精祖細胞とでは,螢光強度変化は共にstage依存性であった。即ち,最も強いstageVII-Xには,最も弱いstageIII〜Vの2倍以上の螢光強度を示した。一方,筋様細胞では,精細管上皮周期に伴う顕著な変化は認められなかった。また,各stageにおいてB型精祖細胞はA型よりもAR螢光強度が弱かったが,A型精祖細胞間では幹細胞型と分化型とで有意な強度の差はなく,A型精祖細胞は一貫してAR陽性であった。以上のことから,精祖細胞およびセルトリ細胞では精細管上皮周期に対応して増減を繰り返し,また精祖細胞では精母細胞への分化に伴って失われることが示された。
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