研究概要 |
ネパールでは物資の移動形態の一方法に,前頭部に紐をかけ,背中に荷物を背負って移動する方法があるが,この形態は頭部から背部にかけてかなりの重量負荷が加わることになり,その作業形態が本当に適切なものであるか否かには議論の余地が残されている.しかしながら,これまでそのような作業形態を伴うネパール人ポーターの職業病に関する報告は聞かれない.これは事故などで突発的に頚・腰椎に負荷が加わった場合とは異なった変位が生じているものと推察されことから,本研究では長期にわたる頭部への重量負荷が体姿勢にどのような影響を及ぼすのかについて解析を行うものとしてきた. 2年計画の初年にあたる本年度では,まず先行研究の文献・資料の入手を行った.さらに,ポーターに関するこれまでの諸データの整理までを行った.その結果,現時点までに明かにされたことは,ポーターと日常生活との関わりから,1)1人が背負って歩く荷物の重量は,約60kg-200kgであった.2)喫煙者や飲酒者が多い.3)頚部の痛みを訴えるものはいなかったが,ほとんどが腰痛と膝の関節痛を訴えた,という点である. 今後は,すでに入手している頚・腰椎のレントゲン解析を行い,さらには,対照群として日本人のカルテから,突発的に頚・腰椎に衝撃が加わり,その結果異常が認められたレントゲンを選出・解析し,前者のデータと比較することを行うものとする.
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