研究概要 |
1. SAA遺伝子多型の人種差 これまで日本人,オーストラリア白人,中国人(遼寧省)についてSAA遺伝子多型をみてきたが,今年度はハンガリー人,スイス人,中国人(江蘇省)について調べた。ハンガリー人,スイス人では,やはりオーストラリア白人と同様にSAA1γが極めて稀であった。中国人(江蘇省)では中国人(遼寧省)と違いはなく,SAA1γは日本人よりも高頻度であることが判った。今後,ヒトの各民族の系統的関連のどの辺りでSAA1が現れたのかを探りたいと考えている。 2. アミロイドーシスとSAA遺伝子多型 SAA1遺伝子型多型は,健常者群もしくはRA一般群とアミロイド群との間で,明らかな有意差を認め,SAAlγがアミロイドーシス発症の重要な危険因子であることを示してきた。今回,剖検例を追加調査し,やはりアミロイド群でSAA1γが高頻度であるというデータが得られた。現在までのところSAA1γホモのRA患者のオッズ比は約8である。さらに,最近ハンガリー人のRA一般群とアミロイド群を入手したので,これの解析を進めている。 3. SAA遺伝子多型がアミロイドーシスに関与するメカニズム (1) SAA1の3つの多型(α,β,γ)はORFであるエクソン3の多型であるが,今回これと完全にリンクする多型を5'-上流の転写調節領域に見い出した。現在,この多型がSAA1遺伝子の転写活性,さらには血中SAAlレベルに影響していないかどうかを検討中である。 (2) ヒトSAA1α cDNAから部位特異的突然変異導入によりSAA1β,SAA1γ,さらにいくつかの変異体を得,それぞれをpCAGGS発現ベクター(阪大 宮崎純一教授より供与)に入れて導入遺伝子を作製した。現在,マウス個体への一過性発現実験およびトランスジェニックマウスの作製を進めている。
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