研究概要 |
インテグリンを介したがん間質相互作用を検討する目的で、各種抗インテグリン抗体ならびにインテグリンのリガンドであるラミニンに対する抗体、加えてE-カドヘリン、α及びβカテニン等の細胞接着分子に対する抗体を用いて、食道、肺、子宮頚部等の各種扁平上皮がんAMEX固定標本におけるそれら分子の発現異常を調べた。その結果、小胞巣あるいはバラバラになって浸潤増殖する扁平上皮がんでは、β4及びβ1インテグリン及びラミニンの発現が亢進しており、一方E-カドヘリン、α及びβカテニンの発現が減弱していることがわかった。SCIDマウス舌への同所性移植によりその頚部リンパ節へ高率な転移を示すヒト舌扁平上皮がん由来細胞株SASの培養上清をBALB/cマウスに免疫した。得られた抗体をヒト扁平上皮がん組織を用いてスクリーニングした。その結果、がん間質と接する腫瘍胞巣辺縁部の腫瘍細胞に強く発現が見られるcloneを得た。Purifyした1aminin5抗体を用いたWestern blot法により、そのcloneはlaminin5のγ2鎖を認識する抗体であることが明らかとなった。そこで、その抗体を用いて、consecutiveに集めた舌扁平上皮がん切除材料67例における発現を調べた。その結果、ほとんどの腫瘍細胞が陽性となる症例(patternD)、腫瘍胞巣を縁取るような陽性所見を示す症例(patternC)、腫瘍胞巣の一部にのみ陽性所見が見られる症例(pattermB)及びほとんどの腫瘍細胞が陰性の症例(patternA)に分類できた。PatternDの染色を示す症例では、腫瘍は小型胞巣を作ってバラバラと浸潤しており、patternD,C,B及びAの順に患者の予後は不良であり、多変量解析にてもlaminin5γ2鎖の発現の強い症例は予後不良であることを確認した。
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