研究概要 |
(背景)腎細胞癌、乳癌、前立腺癌などは骨転移の頻度が高く、末期に耐え難い苦痛を患者に与える。これらの骨高転移性を裏付ける分子機構を解明することは、患者のQuality of lifeの向上のみならず、骨転移の予防にもつながる。 (目的)本研究では、骨に由来する腫瘍細胞誘引因子の単離同定を行った。再現性を持って、多量の蛋白を抽出するために、ラット由来骨形成性骨肉腫細胞株YROS-1(Machida,Nagashima et al.,1995)の培養上清を用いた。 (方法)YROS-1の無血清培養上清を収集し、腎細胞癌細胞株を用いてのBoyden chamber assayを行い、腫瘍細胞誘引活性を検討した。次に、硫安沈殿、各種カラムを用いた分画化を行い、誘引活性が見られる分画に検討を加えた。Western blottingは型通り行った。 (結果)1. YROS-1の培養上清中には、腎細胞癌細胞株YCRに対する誘引活性が存在することがBoyden chamber assayで証明された。あらかじめ培養上清を細胞と混合することにより、同活性は中和された。 2. 硫安沈殿及びカラム操作にて、同活性を有する分画には、38kDaの分量を有する蛋白質が含まれていた。文献上、同蛋白質はSPARC/Osteonectin/BM-40と予想され、同蛋白に対する抗体を用いて行ったwestern blottingで反応性が確認された。また、中和抗体の存在下では、腫瘍細胞誘引活性は抑制された。 3. YROS-1培養上製の腫瘍紺胞誘引活性は、Boyden chamber膜がIV型コラーゲンにコートされている場合に上昇することが知られた。他の基質蛋白質では影響されなかった。 (結論)SPARCはIV型コラーゲンと結合することによって、少なくとも一部の腫瘍細胞に対する誘引活性を示す。この活性は腫瘍における骨高転移性を裏付ける分子機構である可能性がある。
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