研究概要 |
精製したレトロウイルスに基質を加えると、非常に効率が悪く、ゲノムRNAをテンプレイトとしてDNAが産生される(ERTassay、endogenouse reverse transcription assay)。こ, の系へcDNA産生を上昇させることが判明している宿主因子topoisomerase Iとその機能的ミュータントを加えtopoisomerase Iと関連分子のHIV-1逆転写における役割を解析した。その結果、1,宿主因子であるTopoisomeraselを逆転写アッセイ系へ加えるとcDNAの作成を上昇させた。2,Topoisomeraselのミュータントを使い同様にアッセイした結果、酵素のヌクレアーゼ機能だけを失った変異体は依然として逆転写効率を上昇させたが、ライゲース活性を失った変異体は逆転写への影響を失っていた。3,上記の活性はATPによって特異的に上昇することが判明した。 以上の結果を総合するとtopoisomeraselは逆転写においてRNAグノムに対しライゲースとしてはたらき、逆転写を活性化していることが示唆された。またこのライゲース活性はATPの結合によってさらに活性化される。 よって結論として次のことが言える。1,逆転写がATP,topoisomeraselの宿主因子によって制御されていることから、宿主細胞または生態の病態によってウイルスの複製が大きく左右される可能性が示された。2,ライゲース活性が必須であることから、この活性が発揮されるとき、RNAゲノムの乗り換え等により、逆転写酵素自体による変異発生に加え、広い領域に渡る変異が生ずることが予想された。
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