研究概要 |
(1) 動物実験による宿主反応の検討 胃十二指腸疾患の原因であるHelicobacter pylori感染の宿主反応について調べるため、各種感染にたいする免疫反応の異なるマウス(BALB/c,C57BL/6,C3H/He)に感染させ、経時的にその病理、抗体価、サイトカインを測定した。感染により誘導された胃炎は、C57BL/6最も頻度が高く、C3H/He,BALB/cの順であった。しかし、リンパ濾胞を伴う激しい炎症はC3H/Heの一部に認められた。抗体価は、全てのマウスで経時的に上昇していた。最も炎症の激しい炎症の認められた2匹のC3H/Heのサイトカインを調べたところ。一方はTh-2優位であり、もう一方はTh-1優位の傾向を認めた。これらの結果より、H.pyloriによる炎症の誘導および病原性には、宿主側の要因が深く関わっていると考えられた。 (2) In vitro細胞傷害(熱ショック蛋白を介した細胞傷害の検討) 胃のMALTリンパ腫は、H.pyloriの感染により発生したリンパ増殖性の疾患である。この患者は、HSP60が腫瘍性リンパ濾胞芽中心の細胞(抗原提示細胞)に発現している事、さらに血清中にHSP60に対する抗体が存在することを認めた。そこでH.pyloriのHSP60をクローニングし蛋白を発現させた。 MALTリンパ腫のリンパ球を重症免疫不全マウス(SCIDマウス)に移植し菌を投与すると、潰瘍性病変が出現した。潰瘍の発生したマウスには、自己抗体とH.pylori反応性のT細胞が存在していた事から、抗体依存性細胞傷害の可能性が示唆された。
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