研究概要 |
ガス壊疸菌群によるガス壊疸感染巣の成立と周辺組織への浸潤には、起因菌の産生するコラゲナーゼが重要な役割を演じると考えられる。本酵素の構造活性相関を明らかにし、その知見を予防に応用することが本研究の課題である。 平成9年度は、本酵素群のうちの一つ(C.histolyticum ColH,クラスI酵素)が、N末側の水解活性ドメインとC末側のコラーゲン結合ドメイン(CBD)により構成されていることを明らかにした(Matsushita et al.,J.Biol.Chem.273:3643-3648,1998)。ついで2種類の酵素(C.histolyticum ColGおよびColH)から種々の長さのC末端領域を生産し、そのコラーゲン結合能を測定したところ、クラスI酵素(CoIG)ではデュプリケートして、クラスII酵素(ColH)では単独で存在するC末端領域(約120アミノ酸残基)がCBDの最小構成単位であることが明らかとなった。 平成10年度は、まず、これらの酵素の遺伝子がC.histolyticumの染色体上に独立した転写単位として存在していること、本菌はこれら以外にはコラゲナーゼ遺伝子を有していないことを明らかにした(Matsushita et al.,J.Bacteriol.181:923-933,1999)。これらの基礎的知見に基づき、クラスI酵素(ColG)のC末側のCBDを精製し、家兎を免役して抗体画分を精製した。現在、得られた抗体をもちいてマウスを受動免役し、これがC.histolyticumのマウス致死活性に影響を与えるか否かを検討しているところである。さらに、この領域でよく保存されているアミノ酸残基を順次アラニンに部位特異的に置換し、変異CBDを有する融合タンパク質を生産した。現在、これらの変異ペプチドの基質結合能を測定し、基質と直接相互作用している部位の特定を試みている。
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