研究概要 |
1. H.pyloriHSP60の発現と病原因子との関連性 (1) H.pyloriHSP60の発現と病原因子との関連性:本菌のHSP60の発現、ウレアーゼ活性、空胞化毒素産生性およびヒト胃癌細胞株への付着率との間の相関性を検討した結果、本菌HSP60の発現と付着率との間に相関性が認められることを明らかにした(J.Gastroenterol.,1998,33:6-9)。 (2) H.pylonHSP60の局在:本菌HSP60に対するH20モノクローナル抗体(mAb)によりH.pyloriの免疫電顕を行った。その結果、H20mAbは菌体内部のみならず菌体表層とも反応することから、本菌HSP60が菌体表層にも存在することを明らかにした(Microbiol.lmmunol.,1997,41:909-916)。 (3) 本菌HSP60に対するH20モノクローナル抗体(mAb)によるH.pyloriのヒト胃癌由来細胞MKN4S株への付着阻止効果の検討:H20mAbでH.pylonを前処理することにより本菌のMKN45細胞への付着は阻止された。この結果は本菌のHSP60がヒト胃細胞への付着に直接関与していることを明らかにした(J.Med.Microbiol.,1997,46:825-831)。 2. H.pyloriHSP60 (1) H.pyloriHSP60を認識するmAbのエピトープの決定とそれに対するヒト免疫応答:以前確立したH.pyloriHSP60を認識するmAbのエピトープを決定し、その領域がヒトから種々の細菌HSP60に至まで広く保存されていることを明らかにした。またこの領域に対する免疫応答が感染防御に関与している可能性を示す結果も得ている。 (2) H.pyloriHSP60のヒト胃癌由来細胞からのIL-8誘導能:アフィニティー精製したH.pyloriHSP60によりヒト胃癌由来細胞を刺激した結果、IL-8の誘導が確認された(J.Gastroenterol.,inpress)。またリコンビナント(r)H.pyloriHSP60の刺激においても同様な結果が得られた。これらの結果より本菌HSP60はIL-8の誘導に関与することが明らかになった。 (3)rH.pyloriHSP60投与マウスにおける胃内病理学的変化の検討:rH.pyloriHSP60をコレラ毒素とともにC57BL/6マウスに経口投与したが胃内病理学的変化は認められなかった.しかしながらrH.pyloriHSP60とコレラ毒素を経口免疫した同系マウスにH.pyloriを感染させたところ顕著なびらん形成が確認された.
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