研究概要 |
平成9年度には2-bromopropane(2-BP)の雄性生殖毒性の発現機序に関する検討を行い,精祖細胞への障害がその機序であり,また2-BPによるDNAの合成障害が精祖細胞の障害の原因と推定されることを示した(Toxicology Letters 104,19-26,1999).今年度は2-BPによる精巣障害が内分泌撹乱物質である有機スズ化合物との複合曝露でどのように修飾されるのかを検討した.具体的には,普通飼料ないしは塩化トリブチルスズ(TBTCI)25ppm混入飼料で胎児期から(母ラットの妊娠0日目から)飼育された性的に成熟した雄ラットに生食水ないしは2-BP1355mg/kgを5日間皮下投与し,その雄性生殖器系への影響を検討した(つまり,(1)普通飼料+生食水投与,(2)普通飼料+2-BP投与,(3)TBTCI飼料+生食水投与,(4)TBTCI飼料+2-BP投与の4群で実験を行った).その結果, (1) 精巣の病理組織学的評価の結果,普通飼料+2-BP投与でもTBTCI飼料+2-BP投与でも精祖細胞数の減少が認められたが,普通飼料群とTBTCI飼料群との間でその程度に差は認められなかった. (2) TBTCI飼料群では2-BP投与の有無にかかわらず精巣/精巣上体重量の減少が認められた. 本実験では有機スズ化合物(腹足類ではメスのオス化を引き起こす)との複合曝露による2-BPの精巣毒性の修飾は見られなかった.これは,1)2-BP;DNA合成障害によって精祖細胞の分裂を障害と推定,2)有機スズ化合物;アロマターゼの阻害等によって男性ホルモン濃度を上昇と推定→精巣ではSertdi細胞へ影響か,であり,その作用部位・作用機序が食い違っていたことが一因ではないかと考えられた.
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