研究概要 |
Global LEA(Lower Extremity Amputation)Studyは,1995年に英国のDr.Nigel Unwinの提唱によって非外傷性下肢切断発生率をpopulation-based studyによって国際比較するために開始された.わが国では栃木県(人口283,100人)において,非外傷性下肢切断の発生率を検討した.今年度は昨年度の調査を継続し,1996年7月1日から1997年6月30日までの間に発生した下肢切断を調査し,解析には昨年度調査した1年間を加えた.国際比較のため,いくつかの情報源を組み合わせて,統計学的に症例の把握率を補正し,発生率を推定する方法すなわちCapture-recapture(C-R)法を用いた.第一の情報源は,県下の外科または整形外科を標傍する病院,診療科とし,郵送法による調査を行った.第2の情報源としては,身体障害者手帳交付のための資料を用い,さらに第3の情報源として県下の理学療法士に質問票調査を行いC-R法を応用した.栃木県における非外傷性下肢切断発生率は,人口10万人あたり足関節上位の大切断4.7,足関節下位の小切断0.7となり,英国ニューキャッスルの5分の1にすぎなかった.さらに糖尿病患者では,38.5/10万人/年で英国の13分の1であった. 以上よりPopulation-based studyによって,わが国の非外傷性下肢切断発生率を検討したところ,英国に比べ一般人口集団で.5分の1,糖尿病患者集団では13分の1の低値を示した.糖尿病患者での発生率が相対的に低いことは,治療などの医療的環境の違いとともに,遺伝的または他の危険因子の影響の違いを考慮しなければならない.今後わが国でも動脈硬化に関与するmultiple risk factorを併せ持った糖尿病患者が増える可能性があれば,下肢切断症例も増加するかもしれない.下肢切断発生率の定期的なモニタリングが必要であろう.
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