研究概要 |
東アジア諸国における成人病関連対策を促進することを目的として,動脈硬化性疾患関連遺伝子であるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子の変異について調査研究を行った.本遺伝子のC677T(Ala--->Val)変異率は民族間の差を有するとされているが,東アジア人についての報告はまだ少なく,特に韓国人を対象とした研究報告は皆無である.研究者は115人の日本人と112人の韓国人を対象に本遺伝子変異の有無をPCR-restriction fragment length polymorphisms(RFLPs)法を用いて判定し,他の民族の報告資料との比較・検討を行った.日本人のC677T変異のアリル頻度は0.36,韓国人のアリル頻度は0.40であり,遺伝子型別の構成を見ると,日本人はC/C(正常ホモ結合体)44.0%,C/T(ヘテロ接合体)40.0%,T/T(変異ホモ接合体)16.0%であり,韓国人はそれぞれ27.0%,66.0%,7.0%であった.日本人と韓国人は遺伝的に密接な関係を持っているにもかかわらず,両民族の遺伝子型頻度が有意に異なる(chi-square=16.67,P=0.0002)結果を得たのは興味深い.また,韓国人の遺伝子型の構成の特徴として,Hardy-Weinberg equilibriumに従わない高いC/T頻度(chi-square=17.35,P=0.00003)が上げられる.このような高いC/T頻度は他の民族で報告されておらず,韓国人においてヘテロ接合体の有利性を与えた可能性も考えられる.
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