研究概要 |
本年度は、9年度の成果を踏まえ、小区域保健統計システムに利用可能な指標(救命救急体制など)についての検討を行った。 1991、92、93年の横浜市行政区別・男女別人口統計、及び横浜市衛生局保健部地域保健課が保管する同年の横浜市行政区別・疾患別男女別5歳年齢階級別死亡数を基礎資料とし、各行政区ごとの虚血性心疾患、急性心筋梗塞、心不全の粗死亡率、各年齢調整死亡率を算出した。年齢調整死亡率の算出に当たっては、基準人口を昭和60年日本人モデル人口とした直接法を用いた。 横浜市全体及び行政区別・男女別各心疾患年齢調整死亡率を横浜市全体で見ると、男女とも虚血性心疾患と急性心筋梗塞が全国平均と比較して高かった。各行政区間での地域差は著しく、虚血性心疾患と急性心筋梗塞では、中央部・旧市街部の中区で著明に高かった。中区は老年人口割合、各心疾患粗死亡率も高いが、年齢調整を行ってもその傾向は変わらなかった。中区の男性は、虚血性心疾患では最低値の緑区と比べ1.6倍、急性心筋梗塞では対金沢区比1.7倍であった。 また横浜市消防局救急課の協力を得て、救急搬送人員数の動向について検討を加えた。1990年の搬送人員は89,520件であったが、除々に増加し、98年には107,054件と19.3%の増加がみられた。特に急病が19,392から33,439と約72%の増加が見られ、循環器系疾患の伸びが最も大きかった。行政区別では、中区、鶴見区、港北区、南区と中央部・旧市街部を中心に高かった。今後、確定診断に関する情報も得て、地域別の救急搬送頻度、救急病院の利用体制などと併せて、診断精度、救命救急体制、医療整備、リスクファクター、予防医学活動などの指標を活用した総合的な小区域保健統計システムの開発に向けて、検討していく。
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