研究概要 |
本研究はパーキンソン病患者(PD)への創造的活動による運動機能,認知機能,心理的機能への影響を単一システムデザイン(SSD)によって検討することを目的とした. SSDの反復測定項巨としてUnified Parkinson′s Disease Rating Scale(UPDRS)のうち,日常生活活動,神経症状,自覚・精神症状,特殊症状,またMini-Mental State Examinationのうちのword fluency,Rosenbergのself-esteem scale,S-A創造性検査A版の一部を反復測定指標として選択した. 対象は痴呆が認められない外来通院中のPD2名(76歳,女性,Hoehn-Yahr重症度III,75歳,女性,Hoehn-Yahr重症度IV)であった.8週間のベースラインを設定した後,8週間にわたり通常の薬物療法,理学療法に加え,創造的活動を付加した.具体的には患者との話し合いの結果から1名には陶芸活動を小グループで行い,もう1名にはパズル的活動をそれぞれ40分間行った.上述した指標についてPDに反復測定し,創造ら活動未実施時をA期,創造的活動を加えた時期をB期とするSSDによって検討した.Wilcoxon検定,加減速線法などによりA期とB期の得点の有意差を検討した結果,日常生活活動,運動機能障害,神経症状には有意差が認められなかったものの,UPDRSの下位項目である自覚・精神症状とself-esteem score,wordfluencyに有意な差が認められた(p<0.05). 創造的活動の付加がこれらの項目の得点の上昇に効果があったことが明らかにされた.しかし創造的活動は個人によってその意味と価値が異なることが推測され,活動を選択する際には患者との十分な話し合いと検討が必要であると考えられた.今後も症例を重ねて検討していきたい.
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