研究概要 |
一般家庭の室内空気から検出される8種の揮発性有機塩素系化合物への曝露実態を調査した。一方、これらの化合物の経気道吸収における体内動態を動物実験により薬物動力学的に解析した。両者の結果より、揮発性有機塩素系化合物の曝露濃度レベルにおけるヒトでの吸収量を算出した。 閉鎖系ケージ内でラットを飼育し、一定量の各物質をケージ内に注入し気化させた。ラットにおける各物質の吸収、代謝によって減少するケージ内の物質濃度を薬物動力学的に解析し、一定濃度の各物質に単位時間曝露されたラットにおける吸収量をそれぞれ算出した。各物質濃度1 ppbに曝露されたラットにおける吸収量を算出した結果、トリクロロエチレンが最も多く(1.6nmol/hr/kg)、次いでp-ジクロロベンゼン(0.52nmol/hr/kg)、 クロロホルム(0.33 nmol/hr/kg)、 クロロジブロモメタン(0.11 nmol/hr/kg)、 ブロモジクロロメタン(0.072nmol/hr/kg)、 四塩化炭素(0.053 nmol/hr/kg)、 テトラクロロエチレン(0.029 nmol/hr/kg)、 1,1,1-トリクロロエタン(0.019nmol/hr/kg)の順であった。同じ濃度の曝露であっても、化合物によりその吸収量が異なることが示唆された。一方、大阪府下在住の5家庭の夫婦を対象とし、これら8物質への平均曝露濃度を調べた結果、トリクロロエチレン 0.37ppb、p-ジクロロベンゼン 3.3ppb、 クロロホルム 0.47ppb、 クロロジブロモメタン 0.02PPb、 ブロモジクロロメタン 0.04ppb、四塩化炭素0.10 ppb、テトラクロロエチレン0.29ppb、1,1,1-トリクロロエタン0.45 ppbであった。動物実験と実態調査の結果から、実際の曝露濃度レベルにおけるヒト(体重60kg)での一日あたりの吸収量を外挿した。 p-ジクロロベンゼンの吸収量が最も多く(2456nmol)、 次いでトリクロロエチレン(848nmol)、 クロロホルム(224nmol)であり、他の5物質の吸収量はこれらに比較して少なかった(ともに12nmol以下)。p-ジクロロベンゼンは、その毒性、吸収量および曝露期間(慢性曝露)から、生活衛生上最も注目すべき室内汚染物質の一つであると考えられた。
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