研究概要 |
基本的な炎症機構である1)Fc受容体を介する細胞内カルシウム流入と顆粒分泌2)Fc受容体を介する貧食3)インテグリン受容体を介する細胞接着と遊走を対象とし、その分子機構、ことにSrc型チロシンキナーゼとの関わりを解析した。実験材科として各種Srcファミリー分子群及びその変異体、C末端Srcキナーセ及びその変異体、を様々な組み合わせで遺伝子導入した炎症細胞を用いた。 これらの解析から以下の事実を解明した。 1)Fc受容体を介するカルシウム流入と顆粒分泌にはSrc型キナーゼが必要である。 2)Fc受容体を介する細胞内カルシウム流入に関わるSrc型チロシンキナ一ゼには特異性があり、Lyn,Fynは機能を媒介し得るが、c-Srcは媒介し得ない. 3)Fc受容体を介する細胞内カルシウム流入に必要なSrc型チロシンキナーゼの細胞内ドメインはN-末端の脂質(ミチスチン酸、パルミチン酸)付加部位、及びSH2ドメインであり、SH3ドメインは必要とされない。 4)Fc受容体を介する貧食にはSrc型チロシンキナーゼが必要である。 5)Fc受容体を介する貧食に関わるSrc型チロシンキナーゼには特異性があり、Lyn,Hckは機能を媒介し得るが、c-Srcは媒介し得ない。 6)インテグリン受容体を介する炎症細胞接着装置、ポドソームの形成、及びボドソームを起点とする細胞遊走にはSrc型チロシンキナーゼが必要である。 7) c-Src及びLynは共にインテグリンを介したポドソーム形成を媒介し得るが、ポドソームを起点とする細胞遊走はLynのみが媒介し得る。
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