研究概要 |
pltマウスはマウス肝炎ウイルスに対する感受性が野生型マウスに比して著明に高く、50%致死量は野生型の約2000pfuに対して、pltでは約5pfuであった。肝臓と脾臓のウイルス量を感染5日後と7日後に測定した結果、pltマウスでは著明に多かった。肝臓を組織学的に観察したところ、感染5日後では炎症像が両者で同程度に観察されたが、7日後では、野生型は治癒されているのに対して、pltマウスでは肝臓全体に炎症像が観察された。血清中の肝炎マーカーGOT・GPT量も同様に、感染5日後では両者で高値を示したが、7日後では野生型は減少したにも拘らず、pltは高値を示した。以上の結果から、pltマウスではウイルスを効果的に排除できないために肝炎が進行し、死に至ると考えられた。リステリアを感染させた場合は、両マウスで明らかな差がなく、pltマウスの感染防御不全はウイルスに対してのみである可能性が示唆された。マウスにマウス乳癌ウイルス(FM株)を投与し、スーパー抗原特異的なT細胞レパートリーの陽性率を経時的に測定した。Vβ8.2陽性T細胞は、野生型・pltマウス共に増加した後、野生型マウスでは4日目をピークに徐々に減少したが、pltマウスでは減少せず、徐々に増加し続けた。 ミエリン塩基性蛋白(MBP)で免疫して脳脊髄膜炎の発症を観察した結果、pltマウスでは発症率が低く、症状も軽減されていた。pltマウスのT細胞は、MBPや同じ蛋白抗原である卵白アルブミンに反応して増殖すると共に、IL-2,IL-4,IFN-γおよびTNF-β等のサイトカインを産生した。特に、脳脊髄膜炎発症に関与しているといわれるIFN-γとTNFの産生量は野生型マウスよりも多かった。以上の結果は、pltマウスではT細胞はMBPを抗原として認識して反応できるにも拘らず、病気の発症は抑制されていることを示しており、反応性T細胞が病巣へ浸潤できないなどの可能性が考えられた。
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