CD44は、リンパ球、顆粒球、マクロファージをはじめ、線維芽細胞や血管内皮細胞に発現し、リンパ球のホーミングレセプター及び細胞外マトリックスのレセプターとして機能する一方で、リンパ球の増殖及び活性化にも関わるシグナル伝達分子の1つである。慢性肝炎の肝細胞障害機構におけるCD44の役割について、平成9年度は、慢性肝炎患者の血中可溶性CD44の動態について検討した。本年度は、C型慢性肝炎患者の肝組織中の浸潤リンパ球のサブセットを解析するとともに、IFN治療の効果と比較して検討した。C型慢性肝炎患者の肝組織における小葉内及び門脈域周辺に浸潤したリンパ球は、CD8陽性メモリーTリンパ球が主体であった。また、CD44は、門脈域に浸潤したリンパ球及び類洞内皮細胞に発現しており、肝細胞に発現はみられなかった。 IFN投与例において、IFN投与終了1年間血中IIIIVRNAが持続陰性化していた症例を著効群、それ以外を無効群として比較検討したところ、著効群では、血清ALT値の改善とhistologic gradeの低下がみられた。著効群と無効群間で、IFN投与前のCD8陽性メモリーTリンパ球数及びCD44の表出に差はみられなかったが、IFN投与後著効群では、CD8陽性メモリーTリンパ球数及びCD44の表出が低下していた。 以上のことより、CD44は、慢性肝炎の肝細胞障害機構において、局所の免疫応答に関与している可能性が示唆された。今後、CD44のシグナル伝達系が解明されることにより、治療面での新たな展開が期待される。
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