肝細胞癌は既報の遺伝子変化のみでは多段階発癌機構を説明できない癌であり新たな遺伝子の検討および解析手法の開発が持たれている。本研究において検討する転写因子IRF-1は新たな癌抑制遺伝子として注目されている。臨床的には血管腫瘍においてexon skippingが報告され、消化器癌においてもIRF-1 locusの変化が報告されているが、未だ臨床的検討は少ない。基礎的にはIRF-1がp53と非依存的に細胞周期を停止させることが報告され、今後多くの癌においてIRF-1遺伝子の変化が検出されることと思われる。そこで我々は肝細胞癌における遺伝子変化の一端を明らかとするためIRF-1とp21の発現量を検討した。【対象と方法】大阪市立大学第二外科にて切除された肝細胞癌20例を対象とした。癌部、非癌部よりRNAを抽出し測定に供した。IRF-1とp21の発現量は定量PCRを用いて検討した。コントロールとしてβ-actinを用いた。【結果】非癌部と比較して癌部では4例(20%)においてIRF-1の発現低下を認めた。またIRF-1の低下症例を含め7例においてp21の発現低下を認めた。すなわち肝細胞癌においてIRF-1依存性にp21発現が低下する症例が存在することが明らかとなった。【今後の課題】対象となる肝癌症例を増やしさらにp53遺伝子の変化の検討し、IRF-1、p53、P21の三者の相互関係を検討する。また肝癌切除例でのIFN治療効果(抗ウイルス効果と肝発癌予防効果)がIRF-1遺伝子の変化と関係があるのか否かをprospecitveに検討する計画である。
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