研究概要 |
初めに,同時性多発大腸癌(HNPCCとFAPは除く)32症例(64病変),単発大腸癌90症例,肝転移大腸癌50症例を選んで,RER,p53遺伝子異常,K-ras遺伝子異常を検討し,これらの遺伝子異常と大腸癌の再発,転移との関連性を比較検討した.同時性多発大腸癌,単発大腸癌,肝転移大腸癌の遺伝子異常はそれぞれRERが34.4%,15.6%,26.0%で,p53遺伝子異常は37.5%,48.9%,66.0%に認められた.また,K-ras遺伝子異常は全て約50%前後に認められた.これらの結果より,多発大腸癌と肝転移大腸癌はRER異常が多く,また,肝転移大腸癌はp53遺伝子異常が多い傾向が見られた.特に大腸癌の再発には,第一病変におけるRERの検討が重要と考えられた. 次に,検討できた同時性多発大腸癌15症例(30病変),単発大腸癌40症例,肝転移大腸癌30症例から,血清,及び,コントロールとしてリンパ球を分離し,各大腸癌との関連性について検討した.検討項目はRER,p53遺伝子異常,K-ras遺伝子異常,テロメラーゼ活性を選択した.同時性大腸癌,単発大腸癌,肝転移大腸癌の異常はそれぞれ,RERが6.7%,2.5%,26.7%に認められ,p53遺伝子異常は3.3%,10.0%,13.3%で,K-ras遺伝子異常は3.3%,12.5%,43.3%に認められた.さらにテロメラーゼ活性はそれぞれ3.3%,20.0%,43.3%に認められた.これらの結果より,肝転移大腸癌は,特に,血清のRER,K-rasとテロメラーゼ活性との関連性があることが示唆された.今後は症例を増やすとともに,RER,K-ras遺伝子異常やテロメラーゼ活性陽性の単発大腸癌と多発大腸癌についてprospectiveに検討していく予定である.
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