研究概要 |
自己免疫性肝炎の病因は不明な点が多く、その診断に苦慮することも多い。我々が以前作製したマウスモノクローナル抗体H2は、ヒト肝臓にのみ特異的に反応を示す。一方、これまでの実験からH2に対する抗イディオタイプ抗体と同じ反応性を持つ抗体が自己免疫性肝炎患者血清中で低値をとることを報告してきた。抗イディオタイプ抗体のH2との反応はH2上の超可変域が関連していると考えられる。そこでH2の超可変域の一部を合成し、それに反応する抗イディオタイプ抗体を患者血清で測定し、これが自己免疫性肝炎の診断に有用か、多数検体で測定した。H2上6つの超可変領域部分のペプチドを合成し、これらをCovaLink Plateに結合させ、家兎で作製したH2に対する抗イディオタイプ抗体との反応性を見たところ、H鎖超可変域2(HVR2)およびL鎖超可変域1(HVR1)に対し反応性があったが、反応特異性はHVR2のみに認められ、これを用いて患者血清中の抗イディオタイプ抗体を測定すると、自己免疫性肝炎患者(6名)では正常人(9名)に比べ有意に低値を示した。(P=0.003,Mann-whitney U-test)。またL鎖もH鎖とともに3次構造で抗イディオタイプ抗体を認識している可能性もあり、H2のFab部分のみをFcより分離精製し、これを用いて患者血清中の抗イディオタイプ抗体を測定すると、自己免疫性肝炎患者(n=15)では正常人(n=16)に比べやはり有意に低値を示した(P=0.0398,Mann-whitney U-test)。一方、ヒト血清中にH2と同じ反応性を持つ肝特異抗体が存在するかどうかの検討もH2上の塩基配列からプライマーを設定しPCRにて行い、超可変域がH2と完全に一致する抗体の存在が示唆された。
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