研究概要 |
肺癌に対する臨床応用を目的に、担癌局所の単核細胞に対するIL-15の抗腫瘍活性と2次的サイトカイン産生誘導能についてIL-2と比較検討した。 15人の肺癌による癌性胸膜炎胸水中より比重遠心法にて単核細胞(MNC)を分離し、IL-2,IL-15存在下で4日間培養し、Daudi細胞及びSBC-3(SCLC)肺癌細胞に対するキラー活性を4時間5lCr遊離試験により測定した。また各種サイトカインはELISA法にて測定し、健常人及び肺癌患者末梢血と比較し以下の点を明らかにした。。 1) 担癌局所である癌性胸膜炎胸水中単核細胞においてもIL-15刺激によるキラー活性誘導が可能であった。 2) 癌性胸膜炎胸水中MNCのIL-15誘導キラー活性はIL-2と同等であり、また健常人、肺癌患者末梢血におけるキラー活性とも同程度であった。 3) 癌性胸膜炎胸水中MNCにおいて、IL-15,IL-2によるTH1サイトカインであるIFN-γ産生誘導能は健常人及び肺癌患者末梢血MNCと比較し有意に高かった。 4) 癌性胸膜炎胸水中MNCにおいて、IL-4,IL-5などのTH2サイトカインの産生誘導能はIL-2よりIL-15が有意に低かった。 担癌局所のMNCではIL-2によりTH2サイトカインであるIL-4,IL-5の誘導がおこり、このことが臨床におけるIL-2治療時の好酸球増多などのTH2 shiftの原因であると考えられるが、IL-15は担癌局所のMNCにおいてもIL-2と同等の、抗腫瘍活性及びIFN-γ産生誘導能を有し、TH2サイトカインの誘導は有意に低かった。従って、IL-15による肺癌免疫療法はIL-2と比べより有用である可能性が示唆された。
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