気道の炎症性細胞である好中球の活性化に関わるサイトカインとしてinterleukin-8(IL-8)に注目した。IL-8は好中球の遊走因子として重要であるが、単独でも軽度好中球のアポトーシスを抑制し、これまで好中球のアポトーシスの抑制に最も重要なサイトカインと考えられているgranulocyte-macrophage colony-sitmulating factorの作用を相乗的に増強することを見いだした。 臨床的にも気管支喘息発作の際の自然痰を分析してみると、好酸球数の増多と同等かそれ以上に好中球の増多を示す症例が認められた。こうした症例では、喀痰中のIL-8濃度が高値を示していた。これは気道上皮などから最初にIL-8が産生されて好中球を気道に集積させた可能性があるが、その次のプロセスとして、気道に集積した好中球自身がIL-8を産生し新たな好中球を気道に遊走させているものと考えられた。さらに、このIL-8は気道に集積している好中球の生存を延長させて気道炎症を遷延させている可能性があると考えられた。近年、動物の喘息モデルを用いて、好中球がエラスターゼを放出することで、気道の過分泌に関与していることが示されている。 また、これまで好中球の産生する5-リポキシゲナーゼ代謝産物であるLTB4は非刺激状態での好中球自身のアポトーシスを阻害してその生存延長に関与していることを示してきたが、このLTB4は実際の好中球の培養上澄中では測定感度以下の濃度しか存在しなりことが観察された。よって好中球は、非常に低濃度のLTB4を連続的に産生遊離しparacrineやendocrineの機序で作用させている可能性が示唆された。 これらの結果の一部は本年3月末の第39回日本呼吸器学会総会と、4月の米国胸部疾患学会国際学会にて発表する予定である。
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