研究概要 |
当初,我々はPCR-SSCP法を用いて検討を開始したが,変異を調べる方法としてはPCR direct sequence法のほうが検出しやすいことが判明したため,PCR direct sequence法を用いて結核菌のPyrazinamidaseをcodeするpncA geneの変異の有無を検討した.Pyrazinamide(PZA)に耐性を示さないコントロール株としてH37Rv(ATCC27294)を,PZAに耐性を示すポジティブコントロールとしてH37Rv-PZA-R(ATCC35828)を用いた.最初にWayneの方法にてPZase activityを認めない臨床分離結核菌2株(か567,南22)に対してpncA geneとそのupstream及びdown streamも含めて特異的に増幅するPCR反応を行い,オートシークエンサーにてPCR-direct sequenceを行った.次に当院結核病棟の結核患者から採取培養された臨床分離結核菌70株に対しても同様にPCR反応を行いPCR direct sequenceを行った.その結果,PZaseactivityを認めない臨床分離結核菌2株はいずれもアミノ酸の置換(か567株はHis82→Argに,南22株はAla171→Valに置換)が認められた.また当院結核病棟からの臨床分離結核菌70株はいずれも変異を認めなかった.この70株のうち8株はPZAを初期2ヶ月投与した症例の投与開始後2ヶ月後の喀痰より培養された菌であった.この結果はPZAが我が国においてあまり使用されてこなかったこと,及び自然耐性菌株が少ない可能性が理由として挙げられる.またこのような我々が行った方法は現在のPZAの耐性検査を行うことが難しい本邦において有用であり,かつ迅速な検査方法であると考えられた.この研究結果は学会雑誌「結核」に投稿して受諾されおり,発表予定である。
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