研究概要 |
Oligodendrocyte-type-2 astrocyte(O-2A)前駆細胞由来のドパミン神経栄養因子を同定するためにdifferential display(DD)法を用いて検討した.O-2A前駆細胞はラット胎生16日の線条体より我々が開発したbFGF刺激法にて純度95%のO-2A前駆細胞を得たのち,GTC法にてRNAを回収し,poly-Aカラムを用いてmRNAを精製した.オリゴデンドロサイトはO-2A前駆細胞をPDGF刺激により分化誘導して得た.I型アストロサイトは,胎生16〜18日ラット脳より中脳,線条体,大脳皮質,小脳を切り出し,血清培地で培養し振盪法により精製した.オリゴデンドロサイト,各種I型アストロサイトのmRNAをO-2A細胞と同様の方法で得た.また,培養上清のドパミン神経栄養効果をmicroisland法を用いて検討した.mRNAの逆転写により得たcDNAを6種類のプライマーセットを用いてDDを行った.O-2A前駆細胞で発現しオリゴデンドロサイトに分化すると消失するバンドで,大脳皮質I型アストロサイトでは発現していないバンドを選定した.0-2A前駆細胞条件培地のドパミン効果の培養バッチ間の差異と,各バッチより得たmRNAのDD上のバンドの強度により優先順位を付けて検討を行った.DD後回収したDNAを再度PCR増幅を行い,各バンドともサブクローニングを行い,各バンドより5〜10クローンを得た.DDの際に用いたプライマーにて,再度確認PCRを行った後,オートシーケンサにより塩基配列を決定した.合計126クローンより,11個の105bp〜497bpの候補遺伝子断片のシーケンスを得た. 11個の遺伝子断片の塩基配列をBLASTを用いて相同性検索を行った。3個の遺伝子断片は既知遺伝子の一部と完全に一致し,カリウムチャンネル,Noppl40(シャトル蛋白),リボソームRNAであった.他の8個の遺伝子断片はPex,インスリンと相同性があったが未知の塩基配列であった.現在,Nopp140のドパミン神経栄養効果,カリウムチャンネルの関与について検討している.またインスリン,Pexと相同性の高い遺伝子断片について,5'-RACE法により全長塩基配列を決定すべく検討を続けている.
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