研究概要 |
我々は,本研究費の補助により脳血管を支配する神経線維とその神経線維の起源である脳神経の神経節にサブスタンスP受容体が存在することを免疫組織化学を用いた方法で明らかにした. 片頭痛発作にサブスタンスPが関与する.サブスタンスPはタキキニンの一つで感覚神経の伝達物質として知られ,特に痛覚の伝達に関与している.また脳血管に分布する神経線維に存在し,三叉神経節および内頸神経節を起源とすることが明らかにされている.また硬膜血管にも三叉神経節由来のunmyelinated C fiberが分布していることも報告されている.サブスタンスPはin vivo,in vitroいずれにおいても濃度依存性の脳血管拡張作用を示すが,内皮の除去によりこの作用は消失する.また血管透過性の亢進や肥満細胞からの脱顆粒,白血球の活性化など神経原性炎症(neurogenic inflammation)に関与していることも知られている.このようにサブスタンスPの脳血管拡張や神経原性炎症にも関係する. そこで我々は,本研究ではサブスタンスP受容体の抗体を用いて脳血管でのサブスタンスP受容体の形態学的存在とその分布を検討した.Sprague-Dawleyラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し,脳血管と脳血管を支配する神経節である三叉神経節,翼口蓋神経節,耳神経節,内頸神経節,上頸神経節を摘出した.サブスタンスP受容体抗体を用いDAB法で発色させ分布を検討した.この結果,脳血管を支配する神経線維とその神経線維の起源である脳神経の神経節でのサブスタンスP受容体の存在を認めた.サブスタンスP受容体抗体陽性の神経線維の分布密度(神経線維数/血管面積)はウイリス動脈輪前半部で120±56/mm^2,後半部で93±50/mm^2と前半部で密度の高い傾向を示したが統計学的に有意な差を認めなかった(ウイルコクソン検定P=0.138).また脳血管を支配する神経線維の起源となる神経節では,三叉神経節で75%,翼口蓋神経節で92%,耳神経で88%,上頚神経節で40%にサブスタンスP受容体抗体陽性の神経細胞を認めた.免疫電子顕微鏡の検討でも脳血管を支配する神経線維および内皮細胞に陽性所見を認めている.脳幹内でのサブスタンスP受容体の変化を明らかにするため,カプセイチンを脳硬膜に投与し,三叉神経節および脳幹内の三叉神経核のサブスタンスP受容体の変化をconfocal顕微鏡で観察中であるが現在の所,サブスタンスP受容体のinternalizationは観察されておらず例数を増やし検討中である.
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