研究概要 |
薬剤起因性のQT延長およびTorsade de pointsは女性が危険因子の一つとされている。この女性におけるQT延長の理由として、Estogenの関与が推察される。近年骨粗鬆症治療や閉経後女性の冠動脈疾患2次予防の目的などでestrogen剤が用いられるようになり、今後のestrogenの臨床利用は増加する傾向にある。しかしestrogenの心臓に及ぼす電気生理学的影響は十分に解明されていない。今回我々はestrogenの心筋Ion channelに及ぼす影響を検討した。特にQT延長との関連から、遅延整流外向きカリウム電流に対するestorgen効果を中心として研究した。 平成9年度はモルモットの単離心室筋細胞を用いたパッチクランプ法により、以下の結果が得られた。1)Estradiol 10mmol/LはIkの遅い活性化成分であるIksを有意に抑制した(Current density at+50mV depolarization:Control 7.1±2.8vs.Estradiol 5.1±2.0pA/pF,p<0.05,n=10).2)Estradiol lmmol/LはIkの早い活性化成分であるIkrを、-10mVから+10mVの範囲で有意に増加した(Current density at 0mV depolarization: Control 0.68±0.24vs.Estradiol 0.92±0.24pA/pF,p<0.05,n=8).3)Estradiol 10μmol/LではIk電流に影響を及ぼさなかった。 平成10年度はIkrの選択的阻害薬であるE-4031を用いて同様の実験を繰り返したところ、EstrogenによるIkrの増加は抑制されたが、Iksの減少には影響を及ぼさなかった。以上の結果よりEstradiolはIk電流に対して急性の効果があり、IksとIkrで異なる作用を有することが示された。
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