研究概要 |
冠微小血管内皮細胞(CMEC)においてAngIIにより発現増強する遺伝子の病態生理的意義当申請による研究の平成9年度の実験から、以下の成果が得られた。まず、ラットCMECの初代培養系を樹立。同細胞にAngIIの添加(24時間)後、RNAの発現が増加する2種の遺伝子をnRNA diferentialdisplay法により同定した。 平成10年度は、上記の遺伝子のうち、1種について検討を進めた。得られたcDNA断片はpolyA配列を含む332塩基対であり、既知の遺伝子で21%以上の相同性を有するものはなかった。したがって、現時点で未知の遺伝子と考えられるが、cDNA全配列を明らかにするために3'-RACE法を用いたcDNA断片の伸長を試みている。 332塩県対のcDNAをプローブとして、同遺伝子発現の細胞および組織特異性について検討した。Northem blot法でCMECでは豊富なRNA発現が見られたが、新生児ラッ卜培養心筋細胞では明らかな発現を検出し得なかった。組織ホモジネートより抽出したRNAにおいては心筋、脳、腎で発現を認めたが、胸腹部大動脈からは検出されなかった。したがって、心、脳、腎の細動脈や毛細血管レベルでの発現が主であると考えられる。なお、2日令、4-20週令ラットでその発現様式に有意な変化はなかった。また、CMECではAngII(10^<-8>M)添加後、24時間より有意に増力し、48時間後に3.6倍となった。 次に、我々の既報(Nio et al.JCI,95:46,1995)の方法により心筋梗塞ラットを作成し、Northem blot法で心筋での発現レベルを検討した(n=4)。梗塞後2日目よりmRNAレベルの増加が見られ、4日目には梗塞前の2.2倍に達した。その後は漸減し、7日目には前値に復した。よって、虚血心の病態に応じて、mRNA発現が変化することが明らかとなった。
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