研究概要 |
内因性一酸化窒素の気絶心筋に及ぼす影響とペルオキシナイトライト役割を検討した. 方法:開胸雑種成犬に15分間の心筋虚血および120分間の再灌流を作成し,以下の4群に分類.コントロール群(C):対照.レアルギニン群(L);冠動脈対角枝にL-アルギニンを持続注入.D-アルギニン群(D);D-アルギニンを持続注入.L-アルギニン+SOD群(S);SODを静注,以下L-アルギニン群と同様.結果/考案:血行動態に4群間で有意差は無かった.心筋内微小透析膜法による虚血部心筋間質からのNOx量は,C・D群では虚血中には一旦30%程度減少したが,再灌流10分後には虚血前値に復した.L・S群では再灌流後5分から30分の間,虚血前値に比し有意に増加し以後45分でほぼ前値に復した.この事はL群およびS群ではL-アルギニン冠動脈内投与によりNOの増加がみられたことを示す.観察期における4群間の局所壁運動に有意差は無かった.心筋虚血中の局所壁運動は負の値を呈し,C・D群では再灌流後15分後より徐々に局所壁運動は回復し始め再灌流120分後には虚血前値の約70%まで回復した.L群では再灌流後120分目においても局所壁運動は虚血前値の-46%であり壁運動異常の遷延化が観察され,S群ではこの壁運動異常の遷延化を認めなかった.局所心筋の脂質過酸化量はL群の虚血部では有意に増加し,SODの前投与によってその増加は予防された.心筋の抗二トロチ口シン抗体を用いた免疫組織化学染色ではL群の虚血部では核周囲の細胞質が強く赤褐色に染色されたが,C・D・S群では認められなかった.これらの結果は,L-アルギニン群の虚血部でペルオキシナイトライトが産生されたことを表す.以上は,気絶心筋においてL-アルギニン投与によって増加したNOがペルオキシナイトライトによる酸化ストレスを介して壁運動異常の遷延化を引き起こしたことを示唆する.
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