研究概要 |
昨年度は,後負荷の動的性質を忠実にラット生体位心に負荷することのできるインピーダンス負荷装置を開発した。本年度は,後負荷の動的性質が心室の一回外部仕事に与える影響を検討した。一定の前負荷,一定心拍数のもとて収縮性を変化させないで後負荷のみを変化させて一回外部仕事の変化を検討した。 後負荷は三要素ウィンドケッセルで近似し,動脈コンプライアンス(C),末梢血管抵抗(R)をおのおの動物の一般的な正常値の0.2倍から4倍まで,特性インピーダンス(Rc)を0.5倍から10倍まで変化させた。脈波反射の影響の検討はモデル化の限界のため今回は検討できなかった。おのおののパラメタを変化させると,Rは正常値の2倍を中心にそれより増加させても減少させても一回外部仕事は減少した。Cは正常値の1.8倍が最大の一回外部仕事を与えた。Rcは正常値の7.5倍が最大の一回外部仕事を与えた。正常値のRでの一回外部仕事は最大値の94%,正常値のCでの一回外部仕事は最大値の97%,正常値のRcでの一回外部仕事は最大値の81%であった。Cを高値にすると最適Rは大きくなり,Rcを高値にすると最適Rは小さくなった。以上のことから特性インピーダンスの正常値は一回外部仕事最大の観点からは小さな値に設定されており,生体は必ずしも一回外部仕事を最大にすることだけを目指して動作しているわけではないことが明らかになった。特性インピーダンスの増加では冠循環への悪影響があることが関与していると考えられた。
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