研究概要 |
現在までに、腎糸球体の硬化メカニズムにレニン-アンギオテンシン系の関与が明らかになり、成人IgA腎症や糖尿病性腎症においてはアンギオテンシンI変換酵素(ACE)遺伝子の多型性と腎障害の進行との相関なども報告されている。 我々は科学研究費の援助のもと、腎糸球体硬化が一次的に認められ、最もACE遺伝子の関与が注目される巣状糸球体硬化症(FSGS)の患者のおいて、ACE遺伝子多型性と臨床経過についての検討を行っているが、本年度は、FSGS患者と健常対照者についてACE遺伝子の多型性の分析を行なった。(一部を第32回日本小児腎臓病学会に発表した) 【対象】腎生検にて診断された小児FSGS患児31名(男17名、女14名)。対照群として健常対照者100名。 【方法】対象者の白血球よりDNAを抽出し、Rigatらの方法に準じてPCR法にてIntron16内のDeletion(D)/Insertion(I)多型部位を増幅させ、電気泳動法にてACE遺伝子のgenotype:II,ID,DDを決定した。 【結果】FSGS群では有意にDDgenotypeの頻度(P<0.01)、Dalleleの頻度(P<0.05)ともに健常者と比べ高かった。 【結論・考察】FSGSの患児において、ACE遺伝子のDDgenotypeおよびD alleleは有意に高頻度に認められ、二次的に糸球体硬化をきたすIgA腎症や糖尿病性腎症と同じく、FSGSの発症の少なくとも一部にACE遺伝子が関与していると考えられた。今後は臨床経過との検討で、ACE阻害剤使用での腎保護効果の相違などの検討を重ねてゆく予定である。
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