研究概要 |
1) β-lactoglobilin ペプチドの合成:β-lactoglobilinのアミノ酸配列に従い、オーバーラッピングペプチドを合成した.合成は,Fmoc-strategyに基づきシステムPSSM-8(Shimazu)によって施行した。 2) HLAタイピング:HLAクラスII(DR,DO,DP)対立遺伝子のタイピングは第11回International Histocompatibility Workshopにおいて施行された方法に基づき.PCR.SSOP法によって行った. 3) 抗原特異的T細胞株の樹立: ミルクアレルギー患者より末梢血単咳球(PBMC)を分離しβ-lactoglobilin坑原と共にこ96穴プレートて培養した.β-lactoglobilinペプチド混合物でパルスした自己のPBMCをfeederとしてrhIL-2(50U/ml)とrhIL-4(10U/ml)を7日毎に加え4株のβ-lactoglobilin 特異的T細胞株を得た.抗原特異的T細砲株からTerasakiプレートを用いた限界希釈法によりクローン化を行いβ-lactoglobilin特異的T細胞クローンCY2.7とSM4.6を樹立した. 4) 抗原特異的T細胞により認識されるT細胞エピトーブの解析: T細胞の抗原特異的増殖反応は培養72時問後の[^3H]TdRの取り込みにより定★した.β-lactoglobilin 特異的T細胞株に関して合計7つペプチド上にT細胞エピトーブが認められたが,各細胞株が認識認するエピトーブはそれぞれ異なるパターンを示した.IR line はp142-162のみ、AH lineは p14-29,p47-67,p77-97,p97-117を,TK lineはp1-21,p47-67を,MT lineはp1-21,p30-47,p97-117を認識していた.このうちp1-21,p47-67,p97-117の3つのペプチドは異なるタイプのHLAクラスH分子に拘束された複数のT細胞によって認識された.T細胞クローンIR1.9はp142-162を認識していた.MT2.9はp97-117を認識し,このうちp101-115が抗原決定基と考えられた. 5) 抗HLAクラスIIモノクローナル抗体を用いた抗原提示分子の検討: 抗原特異的T細胞株およびクローンの抗原堤示分子を同定するために,抗HLAクラスIIモノクローナル抗体を培養系に添加してT細胞応答への影響を調べた.T細胞株では4株のうち3株で抗DR抗体により著明な増殖阻止反応が認められ,1株では抗DQ抗体によって増殖の阻止が認められた.T細胞クローンでは2クローン共に抗DR抗体により増殖阻止が認められた.β-lactoglobilin の抗原提示にはDR分子の関与が強く示された. 6) T細胞受容体の遺伝子解析: 樹立した抗原特異的T細胞のRNAからcDNAを合成し、RT-PCR法によりT細胞受容体(Vα,Vβ,Jα,Jβ)の解析を行った.ペプチド142-162を認織するIR1.9はVα5 Vβ13.1,Jα11 Jβ1.4を,ペプチド97-117を認識するMT2.9はVα8 Vβ2 Jα130 Jβ2.7を有していた. 7) T細胞によるサイトカイン産生の検討: IR line,AH line,MT lineに関してELISA法によりサイトカイン(IL-4,IL-5,IFN-γ)産生の検討を行った.3株共に大量のIL-5を産生していた.臨床的に即時型の症状を呈したAH line はIL-4の産生が優位であり,非即時型の症状を呈したIR lineはIFN-γの産生が優位であった.
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