研究概要 |
(目的)今回我々は、中枢神経系におけるGABA神経系の活動の抑制あるいは亢進が、ラット熱性痙攣に及ぼす影響について検討した。 (方法)GABA神経系の活動を低下させるためにGABA合成酵素の阻害剤Thiosemicarbazide(TSC)およびGABA antagonistのBicuculineを、GABA神経系の活動を亢進させるためにGABA agonistのMuscimolを使用した。生後20〜25日齢のルイスラットをそれぞれ8匹づつの4群に分け、各群にそれぞれTSC 140mg/kg,Bicuculine 3mg/kg,Muscimol 0.2mg/kg、コントロール群には生食を腹腔内投与した。 ラットをpancronium bromide腹腔内投与で麻痺させ人工呼吸器で呼吸管理し、それぞれの薬剤を腹腔内投与した30分後に5分間過換気の状態にし赤外線にて頭部を加温し発作を誘発した。脳波上発作波が出現するまでの時間を痙攣閾値、発作波の持続時間を痙攣持続時間とした。 (結果)Bicuculine投与群およびTSC投与群の痙攣閾値は、それぞれ35.9±9.9秒(mean±SD),34.0±8.2秒で、コントロール群の106.3±65.6秒に比し有意に低く(P<0.05)、Muscimol投与群の痙攣閾値216.3±67.2秒は、コントロール群の106.3±65.6秒に比し有意に高かった(P=0.001)。一方、痙攣持続時間では各薬剤投与群とコントロール群間に有意差はなかった。 (考察)以前我々はGABA神経系の活動を亢進させるためにPiridoxineを使用したが、Piridoxineにはラット熱性痙攣に対しての予防効果は認められなかった。今回我々はGABA recepterのagonistおよびantagonistを使用し上記のような結果を得た。これらの結果は、LoscherやRating等の脳内GABAの低値が熱性痙攣の発現に関与しているとの推測を指示するものと思われた。
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