研究概要 |
家族性肥大型心筋症(familial hypertrophic cardiomyopathy:FHC)の原因遺伝子としては、現在までに心筋βミオシン重鎖遺伝子をはじめとした7種類の心筋サルコメア収縮蛋白遺伝子の異常が原因となっていることが明らかになっている。また、もう一方でprimary carnitine deficiency,long chain acyl CoA dehydrogenase deficiencyなどエネルギー代謝異常によりFHCが発症し、その遺伝子情報を担うミトコンドリア遺伝子の異常がその発症に関与していることも報告されている。 本研究ではこれら心筋サルコメア収縮蛋白遺伝子異常とミトコンドリア遺伝子の異常が互いにFHCの発症とどのように関係しているかを解明し、その発症原因、早期発見などに有用な手段を確立することを目的として研究を進めてきた。 現在までにFHC25例の患者およびその家族12例における心筋サルコメア収縮蛋白遺伝子領域をRT-PCR法にて増幅し塩基配列を決定、ミスセンス変異の有無を検索した。その結果、2家系でFHC患者全員および未発症で胸痛を訴えている者(1名)の心筋ミオシン重鎖遺伝子Exon20(Gly→741Trp)にミスセンス変異が確認された。又、そのうちの1家系では心筋トロポニンT遺伝子でExon14(Lys253→Arg)にミスセンス変異が認められた。 これら2家系においてミトコンドリア遺伝子(16,569bp)を検索したところ、1家系においてミトコンドリア遺伝子病患者で認められているアミノ酸置換を伴う変異(Tyr→3394His)が認められた。 このように心筋サルコメア収縮蛋白遺伝子とミトコンドリア遺伝子両者に変異を持っている家族性肥大型心筋症患者およびその家族が確認された。今後は、さらにそれらの相関性について機能異常のメカニズムを含めて詳しく検索していくことが必要と思われる。 これらの成果については第43回日本人類遺伝学会(山梨)、第7回関東心筋疾患研究会(浦和)、The 5th international symposium etiology and morphogenesis congenital heart disease(Tokyo)にて発表を行った。
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