研究概要 |
膜骨格蛋白質についての生化学的研究の進歩と膜機能の定量的測定法の開発により,膜骨格の構造と機能の密接な関わりが明らかになってきた。とりわけ,スペクトリン,4.1蛋白質及びアクチン等に量的,質的異常を認める赤血球では変形能,膜安定性等の機能が低下しており早期に網内系細胞に捕えられ,寿命が短縮して溶血性貧血となることが解明されている。本研究ではこれらの膜骨格蛋白質の皮膚(表皮細胞)における機能を解明することを目的として以下の検討を行なった。 皮膚疾患におけるこれらの蛋白質の変化を観察した結果、皮膚悪性腫瘍である有棘細胞癌、基底細胞上皮腫において4.1蛋白質の発現の減少が観察された(Arch Dermatol Res 280,1998)。 これらの研究をすすめる一方、我々は、1996年に表皮細胞の基底細胞におけるマクロファージの遊走阻止因子(MIF)の強い発現を確認しこれまでに報告してきた。(Shimizu et al,FEBS lett,1996)。サイトカインとしてのMIFと細胞膜の重要な構成成分である膜骨格蛋白質との相互作用による相乗効果により、皮膚の炎症、細胞増殖が制御されていると推察される。これらを明らかにすることにより、生物学的作用に不明な点の多いMIFのサイトカインやホルモンとしての機能そのものの解明につながるものと考えられる。そこで我々はMIFの皮膚疾患への関与について研究を進める過程で、アトピー性皮膚炎患者の血清中のMIFの濃度の上昇を確認した(Shimizu et al,BBRC.1997)。これらのことは、炎症性皮膚疾患とMIFとの関連について興味がもたれるところである。また我々は皮膚に及ぼす外的傷害特に紫外線に注目し、紫外線照射によりMIFが表皮細胞から産生されることを、in vivo汲びin vitroの系で世界に先がけて証明した(Shimizu et al,J Invest Dermatol,1999)。
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