研究概要 |
アトビー性皮膚炎患者では血清IgEが高値を示す事が多く、また病変部から採取されたT細胞クローンの解析の結果からTh2優位のT細胞活性化が生じていることが示されている。我々はこのTh2優位のT細胞活性化におよぼす抗原提示細胞の影響を検討する目的で、アトビー性皮膚炎患者および対照健常人コントロールの末梢血単球のサイトカイン産生能を検討し、LPS刺激6時間後にTNF-a,IL-6の発現が、また溶連菌由来スーパー抗原SPEC刺激24時間後にリンパ球のTNF-aの産生が認められること、さらに健常人、アトピー性皮膚炎患者間でこれらサイトカイン産生に差は認められないことを報告してきた。今回我々は、ビタミンA及びD3誘導体(a11-transretinoicacid(RA)、活性型ビタミンD3(VD3))の末梢血単球サイトカイン産生に対する制御効果を検討する目的で、これら薬剤で前処理したさいの健常人末梢血単球のサイトカイン産生をEACS法を用いて検討した。LPS刺激によって誘導される健常人末梢血単球のTNF-a産生はRAによる前処置で約40%抑制されたがIL-6産生は抑制されなかった。VD3はLPS刺激による健常人末梢血単球のIL-6、TNF-aの産生をそれぞれ約60%、70%抑制した。RAおよびVD3はともに角化細胞の増殖、分化をレギュレートする因子として知られているが、同時に免疫系細胞に働き、その増殖、サイトカイン産生を調整することが示されている。RAおよびVD3がともに健常人末梢血単球のTNF-a産生に対し抑制効果を示したこと,またVD3は末梢血単球のIL-6産生をも抑制したことは、これら薬剤が細菌由来内毒素等の刺激によって活性化された末梢血単球によるサイトカイン産性をブロックすることで、炎症性疾患に対する治療効果を示す可能性が示唆された。今後はこのシステムを用いて、アトピー性皮膚炎患者末梢血単球のサイトカイン産生に与える影響について検討していきたい
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