研究概要 |
マウスマスト細胞IL-3依存性cell lineであるMC/9 cellはtyrosine kinase型receptorであるc-kitを発現し、そのligandであるSCFの刺激により、生存維持、アポトーシスの抑制がなされている。今回の研究でわれわれは以下の結果を得た。 (1) 各種retinoid(Ro10-1670,a11 trans,13-cis,9-cis)はすべて、MC/9のIL-3依存性増殖を抑制し、IL-3 receptor発現をdownregulateした。 (2) MC/9のc-kit発現を免疫沈降法、Western blot analysisでc-klt発現を検討した結果、retinoidはc-kit発現に影響を及ぼさなかった。 (3) 線維芽細胞(NIH/3T3)はc-kitのligandであるSCFを発現し、マスト細胞の増殖支持の他に接着因子として働くが、retinoid(9-cis,all-trans)で前処置したMC/9 cellとNIH/3T3 cellとの接着能には変化がなかった。 (4) IL-3添加群、SCF添加群にかかわらず、retinoidによりDNAfragmentatlon(アポトーシス)が惹起された。 (5) retinoidはc一kit刺激後のMAPKリン酸化に影響しなかった。 (6) 活性型vitamin D3であるcarcitriolの核内レセプターはVDR-RXR heterodimerだが、9-cis retinoic acidはRXRのligandであることが知られている。またcarcitriolは単独でc-kit発現をdown regulateする。今回、carcitriolと9-cis retinoic acid、及び13-cis retinoic acidを用いてc-kit発現を検討したが、相互作用は認められなかった。 以上の結果からretinoidはMC/9 cellのIL-3とc-kit/SCF情報伝達系をともに抑制し、特にc-kit/SCF情報伝達系ではMAPKより下流でブロックすると考えた。
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