研究概要 |
末梢血好酸球増多や皮膚組織への好酸球浸潤はアトピー性皮膚炎のみならず多くの炎症性皮膚疾患においてみられる現象である。H9年度の本研究においては、マウス接触過敏反応を用いた末梢血好酸球増多および組織への好酸球浸潤モデルの作成に成功した。このモデルを用いてH10年度は好酸球浸潤の機序の解析を行った。 結果: 1. BALB/cマウスにシクロフォスファミド(150mg/kg)を皮下投与し(day-2)、7%塩化ピクリルで腹部に感作(days 0 and 1)。その2週間後に1%塩化ピクリルで耳介に惹起すると48hr後に真皮に著明な好酸球浸潤がみられる。この際、惹起直前に耳介皮内にanti-IL-β,anti-IL-2,anti-IL-4,anti-IL-5,anti-TNF α,anti-IFNγ,anti-RANTES,anti-MIPIα抗体をそれぞれ局注したところanti-IL-β,anti-IL-4,anti-TNF α,anti-RANTES 抗体にて好酸球の浸潤抑制が観察された。anti-IL-5 抗体には好酸球浸潤抑制作用はみられなかった。 2. シクロフォスファミド前投与および感作後2週目の末梢血好酸球増多状態において、耳介皮内にrIL-β,rIL-2,rIL-4,rIL-5,rTNF α,rIFNγ,rRANTES,rMIPIαを局注したところrIL-β,rIL-4,rTNF α,rRANTES,rMIPIαの投与が好酸球の血管外への遊走をひきおこした。rIL-5の投与では好酸球の浸潤は観察されなかった。 本研究により急性の湿疹反応における好酸球浸潤の機序の一部が明らかになり、特に従来好酸球性炎症において重要な役割を担うとされるIL-5は好酸球が局所浸潤する際の遊走因子としては全く作用してないことが証明された。また本モデルは好酸球性炎症の治療薬の開発およびその効果、作用機序を検討するに際し、非常に有用であると考えられた。
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