研究概要 |
インターロイキン8(IL-8)は、正常色素細胞には発現していないが悪性黒色腫になるとほぼ100%に発現がみられるサイトカインである。色素細胞の増殖におけるIL-8の役割を明らかにする目的で、IL-8に対するアデノウイルスベクター(IL-8/Ad5)を作成し(得られたIL-8/Ad5の有効性はすでに1997年度に確認している)、4種類の悪性黒色腫細胞株WM115,WM852,WM793,SBcl2に感染させてin vitroおよびin vivoでの増殖能に与える影響をみた。まず、IL-8/Ad5を1細胞あたり20PFU(plaque forming unit)の割合で感染させ、in vitroでの増殖能に与える影響をみなところ、IL-8/Ad5感染はいずれの細胞株のin vitroでの増殖能にも影響を及ほさなかった。次に、同じ4種類の悪性黒色腫細胞株にIL-8/Ad5を同量感染させ、この細胞をSCIDマウスの背部皮下に注入し、in vivoでの増殖能に与える影響をみたところ、無処置細胞およびコントロールウイルスであるLacZ感染細胞ではすべての細胞株で腫瘍が形成されるのに対して、IL-8/Ad5感染細胞では、すべての細胞株で造腫瘍性は完全に抑制された。IL-8高発現が黒色腫細胞の造腫瘍性を完全に抑制する機序を検索するために腫瘍注入部位を組織学的に観察したところ、腫瘍組織内に著明な好中球浸潤がみられた。以上の結果より、IL-8/Ad5を感染させた悪性黒色腫は自身が産生するIL-8により遊走および活性化した好中球により殺傷されうると想定し、invitroで実際に好中球が黒色腫細胞を殺傷するか否かをクロミウム遊離アッセイによりみたところ、確かに好中球は黒色腫細胞を殺傷しうろことが明らかとなった。
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