研究概要 |
我々は可溶化ヒト高親和性IgE受容体(Fc ε RI)α鎖細胞外ドメイン(solub1e α)を用いたアトピー性皮膚炎(AD)患者血清IgE値の測定で、AD患者血清中のFc ε RI結合性IgE値は正常人に比べて有意に低下しているという結果を得た。この結果より血清総IgE値の高いAD患者においては、血清中にIgEのFC ε RIへの結合を阻害する因子が出現してくる可能性が示唆された.そのIgE結合阻害因子としては,抗IgE自己抗体、抗Fc ε RI α鎖自己抗体が考えられ,それぞれをELISA法にて検索した.その結果,AD患者血清中に抗IgE自己抗体と抗Fc εRI α鎖自己抗体の存在が確認された。それらの自己抗体の出現頻度(92例中)はそれぞれ10.9%と6.5%で,両抗体とも陽性であった症例が2.2%(2例)あった.次に,IgEの結合能そのものに何らかの差があるのではないかということを調べるためにsoluble αをリガンドとしたSPR法(BIACOA)を用いてIgEの結合能を測定したところ,AD患者IgEのFc ε RIに対する結合能はWHOの標準品や正常人のIgEに比べそのさまざまな程度で低下していることがわかった.そこで,その結合能のばらつきがどのような原因によるものかを調べるために,アトピー性皮膚炎患者の血漿を血漿交換療法にて大量採取し,そこからIgEを精製してウェスタンブロット法にて解析したところ,IgEに何らかの分子(自己抗体以外)が結合していることが判明した. 現在、このIgE結合阻害分子の生化学的、生物学的特性、分子生物学的特徴および阻害因子を有する患者の臨床的解析をしているところである。
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